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触れたくない。

第3章 三






その後、いいって言ったのにカケイは『送る』と言ってくれた。




いつもは女扱いしないくせに、関わってみると優しいもんなんだな…。




まあ、車の中の沈黙は結構痛いけれど…。




と、心の中で溜息を吐いていると、意外にも沈黙を破ったのはカケイだった。





「ああ、そうそう。振りって言っても、それなりのことはしてもらうから」




「それなりって?」



「恋人らしいこと。出かけたりとか、」



ああ、デートか…!婚約者なのにどこにも出かけてないっていうのは確かにおかしい。




「わかった。じゃあ、スケジュール渡そうか?」




「ああ。頼む。明日でいいから」



「了解」




と、そんなことを話しているうちに家に着いたらしい。



最近はいろんなことが続いてるから、今日は早く寝よう。




なんて考えながら、御礼を言おうと運転席に体を寄せると、





「、」




唐突に重ねられたソレに、私は固まった。





………え




「あとこういうのも」




え………、



「じゃ、また」




えええええ?!!!!!!!!






茹でたこのように真っ赤になった私を無表情のカケイはゴミのように車から捨て去ると、




まるで風のように去っていってしまった。




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