
触れたくない。
第4章 四
「もう会えないと思ってました…」
ああ、もう我慢できない。
ぶわりと涙が堰を切ったように流れ出したと同時に、私はとうとう彼の胸に飛び込んだ。
なんだか前より細くなった彼の背中に腕を巻きつけて、胸に顔を埋めると信じられないくらい安心する。
「そんなに寂しかったのかい?」
そんな私に向けてクスリと笑みを零す声が頭上から聞こえて。
なんだかむっとするけれど、本当に寂しかったから…。
「七瀬さんに会いたくて胸が張り裂けそうでした…」
「、」
嗚咽の中でなんとか言葉にすれば、七瀬さんが優しく私の頭を撫でてくれた。
「可愛いことを言ってくれるな君は。
もう少し、君に説明しておけばよかった。
そんなに心配させて悪いけれど、実は旅行に出かけていただけなんだ」
「え」
「ほら、君の好きな和菓子もお土産に買ってきた」
ピタリ。溢れていた涙もその言葉で止まり、涙でグショグショな顔を上げれば、
私の真上で『きびだんご』と書かれた袋を、彼はまるで猫じゃらしのように揺らしていた。
