
触れたくない。
第4章 四
――――…
「七瀬さん…、」
汗だくの中痛む腰をおさえつつ、恨めしい声で名を呼ぶ。
ああもう、無茶苦茶しすぎだ…。
だけど彼はそんな私を気にせずに涼しい顔で、
「二週間以上家を空けていたから随分埃が溜まっててね。
掃除ご苦労さま」
と笑顔でさらりと言うから、熱さも手伝って怒る気も失せてしまった。
――あの後、七瀬さんと久しぶりにこの屋敷に足を踏み入れたのだけれど、帰って来るなり彼に
「君に掃除という任務を与えるとしよう」
なんて無邪気にそう言われ、任務と称した労働を課せられたのである。
雑巾がけしすぎて腰が痛い…。歳を感じるよ…。
それより、喉が渇いて干からびそうだ。
「すみません七瀬さん…あの、お水…もらえますか?」
随分長いこと水を飲んでいないことに気がついて、机の上に置かれた水を見ながらそう言う。
一切手をつけていないのを見ると、多分私に用意してくれたものなのだと思ったけれど…、
「え!!!!」
七瀬さんがコップを手に取ったかと思えば、その水をぐびぐびと飲みだすから呆然とする。
