
触れたくない。
第4章 四
「なんだい、今日の君は本当におかしいな?」
案の定、七瀬さんは目を瞬きさせて驚いている。
それも当たり前だ。自分自身も、こんなことを彼に言うとは思っていなかった。
でも…、
「少し不安なんです。もっとあなたの事が知りたいって思っちゃって、」
気まぐれに抱いてくれるのも、
毎日のキスも、
抱いて欲しいといえば「いいよ」と言ってくれるのも、
私の事をどう思っているんだろうと、考えてしまうから。
私は、抱き合うのもキスをするのも、貴方を求めるのも、
「好きなんです」
「、」
あなたが好きだから――…。
「本当は、前の告白だって聞こえてたんでしょう?」
抱き合っている最中、零してしまったあの瞬間。
七瀬さんが一瞬息を飲んだのを知っている。
本当は聞こえてて、次の日消えたんでしょう。
「……知ったって意味などないよ」
「、」
「こういう人間なんだ。やめておいたほうがいい」
七瀬さんは固まる私の肩を押して体を起こした。
さらりと前髪が揺れ、彼の表情を隠している。
「気持ちのあるセックスはできない」
そして彼はそう言って立ち上がり、
「今日はやっぱり疲れているようだ。
首輪は大事に持っておくんだよ」
畳に座り込む私を見ることなく、部屋を出て行ってしまった。
――首輪は大事に持っておけってつまり、
『カケイと幸せになれ』ってこと……?
