
触れたくない。
第2章 二
ずれ落ちた着流しから見える彼の上半身を見て、不安が広がる。
「七瀬さん、」
「ん?」
「本当にちゃんとご飯を食べてるんですか?」
力をいれたら、本当に折れてしまいそうなくらい、細い。
男の人にしては華奢だとは思っていたけれど、予想以上に痩せている。
「君がここに来るようになってからはちゃんと食べているよ」
今朝だっておにぎりを三つも食べたんだ。と嬉しそうに話す彼に、溜息が出そうになる。
「ご飯だけじゃなくて、魚とかお肉とかも食べないと」
「魚はまだしも、肉はどうも好めない。それより、続きをしないか」
「、七瀬さ…!」
七瀬さんは自分から聞いておきながら、私の返事を待たずに畳に押し倒すと、間髪いれずに唇を落としてきた。
完全に話を逸らされたことはわかっているけれど、キスの心地よさで抵抗する気なんて一ミリも起こらなくて。
それでも、彼の言う”続き”がキスまでだということもわかっているから、
少し寂しくも思った。
