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道の先…

第4章 情緒

「亡くなったのは…内田先生の…奥さんです。」

声が出なかった。何かの冗談ではないかと、自分の耳を疑うとはこういうことなのかと初めて知った。

何かの間違いだろ。先生がふざけているんだろ。しかし伊藤先生の涙を見ると、嘘ではないと言うことがかなりの時差で伝わってきた。

わたしはそれでも声が出なくて、信じられなかった。

「内田先生が…家に帰ったら…倒れていたそうです…。」

伊藤先生は嗚咽をこらえながら一生懸命話していた。

やがて、各地からすすり泣く声が聞こえてきた。けどわたしは、いまだに信じることが出来ず泣くことも出来なかった。

「お通夜の日は…」

それでも続ける伊藤先生。わたしは、どうすることも出来なかった。

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