
不良に良好
第1章 1
そいつは、あいつらが居なくなってもしばらくうずくまっていた。
少し経ってから、ゆっくり正座の体勢になった。
なぜに正座?切腹でもするの?
「…うっ、ひっく…」
俺は痒くもない頭をかきながら、一目で召されていると解る眼鏡を拾った。
「この眼鏡あんたの?」
「あ…ハイ…すみません…」
おおしゃべった。
「レンズはヒビで済んでるけどさ、フレームがもう駄目だよねコレ。一応危ないからさー…ホラ、どうぞ」
俺は、ポケットにかろうじてに入っていた、少しヨレたハンカチに眼鏡を包んで渡した。
「…」
おいおい…だんまりですか。
俺は、なぜか思い出したようにしてカバンを取りに行く。
教室はシーンとして…
「…あ、あ、ありがとう…」
……!
「や…俺はあいつらと話して、あんたの眼鏡拾っただけだし…」
「で、で…でも、救われました…」
あれ、俺なんで手汗なんかかいてるの…
「…そう。それではお気をつけて。俺は帰るから」
「あ…はい…」
教室を後にする。
