
不良に良好
第1章 1
「……」
「…まだ何か用がある?」
ハッとしたように顔を上げた佐山は、また目をそらして、それでまた俺の目を見てきた。
「あの…その」
「下手な丁寧語は使わなくていいよ、そんな事で怒ったりしないし」
目に涙が溜まっている。
一体俺をなんだと思っているのだろう。
「あ…うん…あの…昨日なんで助けてくれたのか、聞きたくて…」
「気まぐれ。」
えっ?
とでも言った顔をして、佐山は呆然としていた。
俺はまた、ゴロンとその場に寝転んだ。
「そんな事よりさ、眼鏡は大丈夫なの?目ー悪いんでしょ」
裸眼で平気なのかな?
「えっと、アレはもう駄目だから、今日中に買いに行くよ」
「そうじゃなくて。あんたが困ってないか聞いてるんだけど」
「え?あ…ちょっと困ってる、けど…」
突拍子も無い返しをされて狼狽えるように佐山は答えた。
「ふーん…」
自分でも少し不思議だった。
でも、そこに違和感はなかった。
「1人で買いに行くの?」
「そうだけど…」
「じゃあさ。ついて行ってあげるよ」
