bug's panic
第3章 混乱
「いかれてんのかてめぇ、ドアなんか開けてみろ一発でパニックだぞ。」
遼太郎さんの眉間にシワが寄る
「行かせてもらいますよ。ドア開けてすぐ閉めますんで、邪魔するんなら力ずくでも通ります。」
「あ?」
遼太郎さんはキックボクシング経験者だ。勝てるわけがないが、真美のために絶対外に出なければいけない。
慶喜の声が聞こえた。
「やめてください、遼太郎さん。将吾もやめろよ。とりあえず落ち着こうぜ。とりあえず外はなしだ。な?」
沈黙が流れた。それを遮ったのは遼太郎さんだ。
「慶喜ごときに言われちゃおしめえだな。おい、立てよ、将吾。悪かったな。」
遼太郎さんが俺に手を差し伸べた、その手を掴み一気に遼太郎さんを地面に叩きつけた。悪いが俺は外に出させてもらう。一目散にドアを開けて俺は外に出た。
空気はいつもと変わらない。虫共も俺に気づいていない。慎重に進もう。後ろから遼太郎さんと慶喜の声が聞こえるが聞こえないふりして俺は走り出した。
地獄にいるのかと錯覚した。
巨大な赤いありの大群に体を噛みちぎられながら助けを求める人。チョウのストロー状の口が頭に刺さり血を吸われながら苦しんでいる人。クモの糸にかかり、食われる順番を待ちながら恐怖に顔を引きつらせるもの。
ここは地獄になったのか、見るに堪えない光景ばかりだ。真美は、真美は無事なのか。
その時だった。後ろから声が聞こえた。
「将吾!!」
誰だ?後ろを振り向くと慶喜と遼太郎さんが息を切らしていた。
「なんできたんですか!!俺の勝手にあんたらを巻き込むわけにいかないんですよ!」
遼太郎さんがタバコに火をつけ息を吐き出しながら言った。
「真美ちゃん、助けに行くんだろ?付き合ってやるよ。ただ俺を叩きつけた代償はでけーぞ。後で殺すからな。」
俺は泣いてしまった。嬉しかったのか、周りの光景への恐怖心か、もうなにかもわからないが泣いた。
「将吾!とりあえず真美ちゃん助けにいこーぜ。親友だろ?」
「ああ、お前とダチでよかったよ。」
慶喜の顔が引きつる。同時に遼太郎さんのタバコが落ちた。なんだ?そんなに感動したのか?
違う。
恐怖に引きつった顔だ。
慶喜達に背を向けて振り向いた。
悪夢か?目の前に10メートルはあるだろう。
真っ赤なカマキリだ。
人を食っている。食われているのは
女性だ。