
ネムリヒメ.
第26章 夜明け.
彼がベッドから転げ落ちた原因は自分だ
理由はあるにせよ、彼を落下させた直接的な原因は紛れもなくアタシなのだ
「ち…ぃっ、ゲホッゲホッ」
するとアタシの声を聞いた彼が寝起きを匂わせる掠れた声をあげる
普通に考えたらベッドから落とされて目が覚めるとか最悪なほかのなんでもないだろう
うっすら開けられた瞳でアタシを捉え、何か言いたそうな雅くん
怒鳴られても仕方がない
だけど痛みと咳がそれを許さない様子だった
「んー、…うるさいってぇ」
そんな一大事をものともせず、ベッドのうえで微睡む天使
「なん、で…のぞ…む、ゲホッ」
それに雅くんが何らかの反応をするのだけれど、正直何を言っているのかまるでわからない
でもとにかく雅くんを起こさなきゃ
おもむろにカラダを起こそうとするアタシ
だけど、あれ…
なんか重た…い
「…ばっ、お前!!」
思うようにカラダを動かせなくて眉根寄せるアタシを見て、雅くんが一瞬焦った様子で声を張る
と、
「っるさいなぁ、雅なんかクタバ…レ…」
「わっ!!」
アタシ雅くんじゃないのに!!
なぜか寝ぼけた天使の蹴りがアタシのお尻にメガヒット
嘘だよね!?
あ、嘘じゃないみたい
行き先はもちろん決まってる
「ッ────!!」
その後、悲しくも落下の一途を辿ったアタシの下敷きになった雅くんの悲痛な叫びが部屋の隅でこだました
お、怒られる!!
この世の終わりかってくらい睨まれて、怒鳴られて…
…なのに
