テキストサイズ

ネムリヒメ.

第26章 夜明け.







現実は違った。



「………ちぃ」


え…!?


返ってきた優しい声に思わず耳を疑った

なにがあったかわからない状況で、なにが起きているのかがわからなかった


なんで怒らないんだろう

なんで怒鳴らないんだろう

それが不思議で戸惑いが生じる

どけっ!!って冷たい声で言うんじゃないの?

それどころか、雅くんは床に転がったままそんなアタシを抱き締める

痛いくらいに腕に力が込められたかと思えば、壊れ物を抱くかのようにそっと包まれる


「あの、ずっと隣にいてくれたの?」


ふと思ったことを口にした

すると、彼は言葉の返事の代わりにそっと頭に手を乗せる

その重さが不思議と心地よい


なんでだろう…

アタシを離そうとしない雅くん

これって寝起きドッキリpart2なんだろうか

そもそもなんで雅くんといるんだっけ…


アタシが雅くんと、じゃなくて雅くんがアタシなんかと寝るわけないのに

いつも怖くて、つっけんどんで

きのうだってあんな…

あん…な…!?


「ッ…!!」


不意に落とした視線の先に見た自分の手首に息をのんだ


─これ…なんだっけ…


傷だらけの手首

擦りきれてて、痣になってて…

震えてる


だけど、そこで雅くんがアタシを抱いて離さない理由が初めてわかった

震えてるのは手先だけじゃなかった


アタシ、全身で震えてるんだ…


でもどうしてこんなに震えてるんだろう





─きのう、アタシは……!?








ストーリーメニュー

TOPTOPへ