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庭の柘榴

第2章 虜

ファミレスのバイトを辞めた私はすぐにエステティシャンへの道へと進んだ。
仕事は順調で思ってた以上に楽しくて
これが天職か。というくらいだった。

でも何かが満たされてなかった。
胸の中で何かが疼く。

そんなときSNSで知り合った男性がいた。
たまたま共通の友達がいて
話があったのだ。
毎日メールをするようになってそのうち
飲み会をやろうということになった。
お互い3人ずつ呼ぶ予定だったが
そろそろ結婚し始めた周りに飲み会など参加する友達はいなかった。
そのことを伝えると彼も同じと。

じゃあ、2人で飲もうということになったのだ。今、思えば彼の作戦だったのかもしれないね...

危険な香りがしながらも私は浮かれていた。
しばらく男性と2人で飲みに行くなんてなかったし。気付けばミニスカを履いて待ち合わせ場所に立っていた。

車で現れた彼はすぐに「私」と気付き
手招きをした。
助手席に乗り込むと
声が聞こえないくらいの大音量のノリのイイ曲がかかりココナッツの香りがムン...とした
後部座席にはサーフボードが載っていた。

スキンヘッドの彼はヤンチャな笑顔を見せ

「かわいいね~!」

言いながら太ももをチラッと見た。
あぁ...こんな人だったんだ...
思わず固まってしまった。

美味しいパスタのお店があると言って
車を走らせた。
緊張してる私におかまいなく
世間話やおもしろネタをテンポ良く出す。
緊張してた私も思わず
プッと吹き出してしまう喋り口だった。

いつしか彼のペースにすっかり
乗せられ私も話すようになっていた。

車を走らせて2時間、
話がおもしろかったからそんなに
時間が経ってるとは思わなかった。

予想外の渋滞に彼は舌打ちをした。
舌打ちにビクッとしてしまった私に
気付いた彼は

「あ、あ~ん!ごめんね~!こんなに渋滞してるとは思わなかったよ~!仕事だったらサイレン出しちゃうんだけどなぁ~(笑)」

彼は...そんな仕事だ。

しばらくするとお目当てのお店に着いた。
しかしお店が変わっていたのだ。

そこで彼はまた舌打ちをしてイラッとした表情を見せたのだ。

「ごめんね~!しばらく来てないうちに変わってたみたい...どうしよう」

「ううん、ここでいいよ」

キレたりするんじゃないか...
そう思った私はなだめるように言った。






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