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庭の柘榴

第2章 虜

ホッとした表情に変わった彼は
またチラッと太ももを見た。

ビュッフェスタイルのレストラン。
緊張が蘇った私は正直、サラダしか
食べられなかった。

彼は車内とは明らかにトーンが違った。

話もあまりせず周りをキョロキョロしながら
私の顔を見てる。
彼の目線が気になって仕方がなかった。

「落ち着かねぇよ。ほかいこーぜ」

サラダを食べ、ジュースばかり飲む私に言った。

不安になった私はどこに行くのか聞くと

「バーとかさ。」

「だって、車じゃない。飲酒運転はダメだからね」

遠まわしに断った。

「飲酒はしねぇよ。ほら、うさこが飲むんだよ」

私だけ飲むなんてできない。
相手は見るからにヤリ男なんだから。

彼はいきなり席を立ちレジに向かった。
慌ててついていき車に乗り込むと
突然、私の太ももを鷲掴みにした。

「ちょっと...!」

彼は唇をベロン...と舐めると

「うまそうだな~」

そう言ってエンジンをかけた。
大通りに出ると先にはホテル街が見えた。

まさかと思い彼を見ると

「なにもしねぇよ」

笑い飛ばしホテルの駐車場に滑り込んだ。

「ゴロゴロするだけだよ」

なんだかお約束のセリフ。
サッサと車から降りてホテルの入口で
待つ彼。
彼のもとに行くと

「ほいっ」

私の背中を勢いよく押してホテルに入れた

ホテルに入ったのは10年振りだろうか...
思わずキョロキョロしてしまう。
カップルが入ってくる気配がすると
反射的に顔を背けた。

そんな様子に気付いた彼は

「ほら、早く入らないといろんな人に会うだろ?」

勢いでついに部屋に入ってしまった。

部屋の真ん中で立ち尽くす私に
かまうことなく
ソファにドカッと座りテレビを見始めた。

「座ったら?」

そう言いながらテレビを見て笑い声を
あげる彼。ソファの隅っこに
ちょこんと座った。

その姿を見て彼はふふん...と
鼻で笑いビールをグラスを注ぐと
私の前に置いた。

隣でテレビ見ながら笑い転げる彼
この温度差がなんとも言えなくて
すごく嫌な空間だった。

ふだんビールを飲まない私だが
グラスの半分まで一気飲みをした。

彼はそれを見てまたふふん...と
笑ってビールを注いだ。

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