その手で触れて確かめて
第3章 歪な夜の夢 (O × S × M)
「飲まないのか?」
グラスを手にしたまま口をつけようとしない俺を訝る智が顔を覗き込んできた。
「飲ま…せて。」
「え…?」
「ダメ?」
智は、躊躇うことなく、
俺の手からグラスを奪い取ると、
グラスの水を口に含み、
俺の頭を引き寄せた。
押し付けられた智の唇から、智の体温と同じ温もりを持った水が流れ込んでくる。
俺はそれを何の迷いもなく喉を鳴らして飲み込み、
間近にある智の顔を見つめた。
きめ細やかな肌。
すっと通った鼻筋。
吸い込まれそうな程に透き通った瞳。
自分と翔にはない、完璧なバランス。
自分の中で中途半端に燻っていたものが、息を吹き返したように熱くなる。
首に両腕を巻き付けると、
智の体がぴくりと波打つ。
「翔のヤツ、そろそろ戻ってくるんじゃないか?」
「…いいよ。来たって。」
「また、暴走したらどうすんだよ!?」
「守ってよ?さっきみたいに?」
「あれは明らかに行きすぎだって思ったから。」
「大丈夫。兄さんの言うことなら聞くよ?」
智は、俺の体をベッドに沈めた。
「聞かなかったら?」
「…その時は考えるよ。」
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