
誰かお願いつかまえて
第6章 ペットでもいいから
幸村が力なく岡崎さんにもたれると、岡崎さんはようやくキスをやめた。
(なんで、受け入れてんだよ……!)
嫌がってはいなかった幸村にもアイツのことを女として扱う岡崎さんにも、ただ見ていただけの自分にも腹が立つ。
(くそっ…!
なんでこんな気持ちになるんだ!)
岡崎さんはもう1度アイツを強く抱きしめて、車に戻った。
(!こっちに来る!)
俺はあわてて振り返って歩き出した。
隣を車が通り過ぎるときだった。
「遅すぎる…!」
スピードダウンした車の助手席側の窓が開けられて、確かにそう言われた。
それは、何に対して?
分からないけど刺さる言葉だった。
小さくなる車を見たまましばらく立ち止まっていた。
―結局俺はお菓子の紙袋を持って家に引き返した。
