
誰かお願いつかまえて
第1章 私ってやつは
大地の言葉に息を呑む。
「俺は今はいないよ」
え?
いないって言った!?いないって言った!?
『よっしゃ!!!』
「おい、人の不幸を喜ぶな」
「そうだそうだ!お前と大地を一緒にするんじゃねーよ」
当の本人と英雄に怒られる。
(別に彼女がいないことを喜んだんじゃなくて…いやまぁそうだけど)
「でもそろそろやばいよな」
…何でもいいけどすごい量飲んでない、璻?
「結婚するーとか、同棲するーとかもどんどん聞くようになってきたし、果ては来月出産のやつもいるって聞くし」
『しゅ、出産!?!?』
璻の一言は聞き捨てならないものだった。
「あー。結婚適齢期?だか出産適齢期?だか知らねーけど今ぐらいなんだろ?」
遼に問われる。
『え、いや、よく知らないけど?』
「あー。お前に聞いた俺が馬鹿だった」
…悔しいことに言い返せない。
「そろそろ結婚も視野に入れて付き合うべきだよな」
「ぷっ!璻がそれ言っても説得力ねーよ!!」
(結婚、かぁ…)
璻と英雄のじゃれあいを横目にぼーっと考えていた。
今の自分にとっては誰かと付き合うことでいっぱいいっぱいだが、もう26。
そろそろ結婚してもおかしくない頃なのか…。
いや、下手すると生涯孤独………?
自分の想像ながら恐ろしく思って身震いする。
「あー、ここに結婚できそうにない女が1人」
『おい』
身を乗り出して遼の頭を引っぱたく。
「いってぇよ!!暴力女!」
「ほら、お前それだよ」
呆れたように璻が言った。
