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おさななじみ。

第1章 はじまり。

自分は人と違うと認識したのは小学生の時だった。
それまでは何とも思っていなかった好きな色がピンクだとかヒラヒラした洋服が可愛いだとかが、僕の中の小さな小さな世界で否定され始めたのがきっかけだった。
男のくせに変だとか気持ち悪いとか初めは訳がわからなかった。だって好きなものがソレなんだから仕方がないじゃないか。
しかし、小さな世界で異端は目立ち、それは既に個性の枠を越えていたようで奇特な目で見られていたのも事実だった。
幼い僕に拒絶や否定が耐えられるはずもなく、僕はひたすらにそれらを隠すことに専念した。好きな色は青で、洋服はシンプルな方がいい。自分の信念を貫くことより同調を選んだ。振る舞いだって自分の中の男を意識していた。
ねえ、と声を掛けるのではなく、なあ。おい。そうだね、ではなく、だよな。そんな細かい所まで神経を使って日々を過ごしていた。
すると、初めから仲間外れやいじめてやろうという気持ちがあったわけではなかったのだろう奴らは、拒絶の言葉がなかったかのように今まで通りに応えていた。
今考えるとそれは既に友達でもなんでもない奴らだったのに、その頃の僕はひどく安心していたものだった。

そんな僕をずっと見ていた奴がいる。家は隣同士で年も一緒で。物心ついた頃から何をするにも一緒にいて。だから件のこともずっと見ていた。そして僕に声をかけ続けたのだ。
俺は気持ち悪いと思わない。らしくていいじゃないか。あいつらのことなんかどうでもいいだろ。
その言葉達が救いになったことは度々あった。でも僕は素直じゃなくて、異常と言われるのが恐くて。結局は奴らの言うことを選んでしまっていた。
そうすることで彼は憐れむわけでもなく、ただ一言。

「由樹がそうしたいならそうすれば良いよ。どんな由樹でも俺はずっと一緒だからね」

目の前がチカチカと彩り始めたのだ。
ああ、僕は孝基が好きなんだ。その事実が浮かんでから消えることはなく、僕の心中は更に過酷なものへとなっていく。

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