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おさななじみ。

第2章 せいちょう。

ようやく想いを伝えあって数日。二人には特別変化はなく、今まで通りの日々を送っていた。そもそもが付き合ってる様だったのだから当たり前といえば当たり前なのだが。一番の変化は本人達ではなく周りの方が大きかった。ああも堂々と公開いちゃつきを見せられては内心穏やかではない。常々好奇心と未知の世界への恐怖とで戦っていた。
そんなことは露知らず、二人は今日も同じ帰り道を肩を並べて歩いている。
「ん」
そう無造作に差し出される手に戸惑う。つい最近まで片思いだと思っていたのだ。トントン拍子に上手く行きすぎていて怖いと感じる。友人という関係よりも身近に失う恐怖を感じる恋人という関係。ましてや男同士。殊更びくついてしまう。明るくは振る舞っているものの、根元のネガティブ思考が働きまくる。
いつまで経ってもその手に触れてこない由樹に痺れをきらし、孝基は半ば強引に引き寄せた。
時折見せる男らしさに、由樹は恥ずかしくなってしまう。多少の身長差はあるものの、華奢とは言えない由樹を軽々と動かしてみせるのだ。孝基も意外と見掛けにはよらないところもあるらしい。
「…なんか恥ずかしい」
「今更でしょ」
ポツリと呟く由樹にイタズラっぽく笑う孝基はまさしく年相応の少年だった。
確かに小学生の時には手を繋いで歩くこともあったかもしれない。しかしそれは恋愛だなんだを差し置いての行為であって、今のように恋人という甘美な間柄ではなかったためだ。
想像していなかった。恋愛が実るということが次の辛さを連れてくるだなんて。

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