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Transcribe the Imagination

第13章 *Sleet ball

「うぉぉおおーー!すっげええええ!!」

放課後の誰もいない校舎に大野の声が、
響き渡った。

「大野、うっせ」
「ご、ごめんね!つい、興奮しちゃって!!」

今、訪れているのは美術室。
俺は扉に凭れかかり、大野は奥で叫んだ。

画材を見て興奮したらしい。

「大野、絵描いてんの?」
「ん、まあ……」

明るい表情から暗い表情に変わった。

「何?何かあったの?」

一定の距離を保っていたけど、
暗い表情を見て何故か近くに寄っていた。

「転校の理由、家の都合って言ってたでしょ?」
「ああ」

担任が言ってた、はず。

「実は、絵のことで問題があってさ……」
「問題?」
「んー……不祥事っていうか……」

大野は少し悩んで、

「単に嫌がらせ」

と、言った。

「嫌がらせ受けてたのか」
「うん、僕、気が弱いから…」

えへへ、と自傷気味に笑った。

「大野は弱くないんじゃね?」

大野の手元からキャンパスを取り上げる。

「え?」
「いや、根拠はないよ?でも…んー、勘」

曖昧な言葉を伝えると、
大野はまたふふっ、と笑った。

「しょーってテキトーなんだね」
「はあ?簡潔って言え」
「え?何か違くない?」
「うっせえ」

この美術室で距離が縮まった気がした。

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