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Transcribe the Imagination

第13章 *Sleet ball

「怖かったんだ……」
「大野?」

はぁはぁ、と息を荒くしていく。

「ただ絵が好きって気持ちだけじゃ、描いてちゃいけないのかな?」
「んなことない」

「楽しんでるだけじゃ、ダメなのかな?」
「ううん」

啖呵を切ったように、
色々な弱音がボロボロ漏れる。

「絵は何も悪くないのに…」
「大野…」
「絵を傷付けるくらいなら、僕を殴ればいい」
「は?」

大野の口からそう溢れた。
幻聴かと思った。

「絵は僕の全てなんだ」

顔を上げた大野の顔は、
あの美形の大野じゃなくて歪んだ表情だった。

「……」

何も喋れなかった。
てか、声が出なかったんだ。

「僕が必要とするのは絵で、僕を必要としてくれるのは絵だけなんだ」

大野が嗤った。無邪気に嗤った。
なんだろう。この胸騒ぎ。

「大野、絵だけじゃないぞ」
「…え?」

良かった。
まだ、理性は保ってくれてた。

「俺もお前を必要とする」
「え?」

顔色が戻ってきた。

「今から、お前を必要とする」

細い体を強く抱き締める。
そうしなきゃ、大野が風で飛ばされそうで。

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