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耳元では機械音。

「出ろよ……」

和也は電話に出なかった。
メールの返事もない。

遅い。遅かった。遅かったんだ。
何もかも、手遅れなんだ。

あの時、どうして気付かなかった？
俺が和也に言い放った言葉は全て嫉妬に似たものだった。

「クッソ……」

今なら言えんのに。
今なら、今なら……。

カチャン……。

ポストが音を立てた。

金属の音だった。
もしかしたら鍵を返しに？

「ちょ！待てっ……」

ポストを確認すると、
和也がつけていたキーホルダーと共に鍵が入っていた。

玄関を開けると、空は真っ暗で。
俺は半日寝ていたことに今更気付いた。

階段に目を向けて、エレベーターに目、を……。

「和也！」

ピクッと肩が跳ねる。
そしてゆっくり振り返った。

「和也、ちょっと待ってろ」

急いで駆け寄ると、
俺から逃げるように階段を駆け下る。

「……クッソ」

俺は後を追い、階段を駆け下る。