1人じゃなくて。
第6章 No.6
───ギュッ──
「ごめん。泣かないで。」
抱き締められていた。
自分より大きな胸に奈瑠はすっぽりとおさまる。
頭を撫でられ、上手く力加減が出来ていないシロは、少し強めに抱き締めていた。
少しだけ鼻先にツンとくるインクの匂いが、次第に奈瑠を落ち着かせた。
「……スンッ、…すいません、勝手に泣いちゃって。………やっぱり、ちゃんと話しますね。」
「話す?」
鼻の天辺がほんのり赤くなっている。
目元に溜まった涙を、指先で拭う奈瑠。
その仕草は、妙に彼女を色っぽくさせた。
「私…のこと、まだ何も知らないでしょう……?」
上目遣いで、しかし覚悟が現れている瞳にシロは一瞬心が揺らいだ。