
透明な糸
第1章 れっつ☆ごー
「ほんと、ああいうの嫌だよね…。
どうせ、自分達が意見出さなかったのを棚にあげて、最後に決まったら決まったで、ぜっったい、文句言うでしょーがっ!」
秘密の場所…それは、芸術棟から教室棟に通じる、外にある階段の裏のことだ。
日光もちょうどよく当たり、ほどよく日陰になっていて弁当を食べたり、お喋りをするにはもってこいの、誰も知らない私たちだけの秘密の場所。
むしゃくしゃしながら、私は誰もいないことを良いことに少し大きめの声で、愚痴をこぼした。
(まあ…虫をたまに見かけることは…譲歩しないとね。)
「ホント、そう。意見を出してもらわなきゃ、こっちだって困るんだから…」
小野ちゃんが、卵焼きを口に運んで、もぐもぐさせながら呟くように言う。
「先生がいないから…ってのも、あると思うんだけどね。生徒達で自由に決めろー、みたいなね」
「ああ、それもあるかも」
クスッと、小野ちゃんが笑う。
おしとやかで、鎖骨よりちょっと下にある、まっすぐな艶々とした黒髪を、耳より下にひとつ結びしている。
そして、銀縁の高級感の漂うような眼鏡…。
真面目ちゃん、という感じで、先生からもあなたがいるから大丈夫、とクラス委員を任されちゃって。
(いや、小野ちゃんが身に付けているものは全部、光って見える…。
これは女子力かッ(゜ロ゜))
