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第25章 真夏の雨 by millie

それが初恋だったの気付いたのはあの人と逢えなくなってから…。

あの胸のドキドキが恋だと気が付いたときにはもう終っていた恋。

夏の暑い空気もセミの声も、突然の雨に濡れたアスファルトの匂いも…全部、覚えてる。

あの日、突然の雨に持っていた本を濡らしたくなくて…。
舗道に蹲った俺にそっと傘をさしてくれた人…。

灰色の空が彼の傘で青空になった。

「大丈夫?」

傘をさすその人は

「よく図書館にいるよね?
 本、好きなの?」

って柔らかく笑った。

それから俺達は何度も図書館で会った。

図書館に行くといつも彼を探すようになった。

夏の終わり、いつもの図書館からの帰り道。

突然、彼が言う。

「翔くん、ごめんね。
 明日からもう来れない」

それだけ言うといつものようにバスに乗っていってしまった。

それからいくら探しても…彼に逢うことはなかった…。

俺の初恋は幻のように儚く消えた。

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