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第28章 あかつき by のさまじょ
雨が降ってた。
天気予報、見てなかった…
「あちゃー…」
俺はレッスン場の出口にある傘立てから、ビニ傘を一本引きぬいた。
柄のところをみたら、名前が書いてあった。
”櫻井翔”
誰だっけ…
まだ入所してから、日が浅い。
誰が誰だかさっぱりわからなかった。
首をひねってると、後ろから肩をたたかれた。
「傘、ないの?」
目線は俺より下で。
くりくりとした目で俺を見上げてる。
女?
「それ、俺の傘」
そういうと、その女…いや、櫻井くんは微笑んだ。
「あ…え?」
「駅まで入ってく?」
そう言って笑った。
色が白くて、唇が赤い。
まるで女の子みたいで。
いや、女より綺麗だった。
俺は、恋に落ちた。
初恋だ。
他の誰にだってこんな気持ちになったことない。
それからは、櫻井くんの姿を目で追ってばかりいた。
”櫻井くん”から”翔さん”に呼び名が変わるまで、さほど時間はかからなかった。
翔さんは、頭が良くてなんでも知ってて。
話していると時を忘れた。
運動神経は俺より悪いけど…
たくさんたくさん、翔さんと時間を過ごした。
慶応って、凄いね…
同じとこ行こうとしたら、まったく偏差値足りなかったよ…
泣く泣く高校はあきらめた。