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第29章 まほろばの家 byアロエリーナ・のさまじょ・millie

それから、俺達はこの山小屋にいる。


正確には住んでいる。


”山がいい”


と和也が言ったから。


食べ物や日用品は、麓の商店が届けてくれる。


和也の体調の良い日は、自分たちで車を出す。


後は、なにも要らなかった。


俺には和也さえいればよかった。




眠った和也の髪をさらさらと撫でる。


二時間ほど、そうしていただろうか。


点滴が落ちきると、針を抜いた。


病気のせいで、血が止まりにくい。


俺は和也の腕を押さえる。


暫く押さえて手を離すと、まだ止まっていない。


また押さえる。


「…翔…?寝ないの…?」


和也が覚醒する。


「うん。もうちょっとしたらね…?」


この山小屋にきてから、和也が俺のことを翔と呼び捨てにするようになった。


俺はそれが嬉しくて。


また髪を撫でる。


目を閉じた和也が、俺の手にそっと自分のそれを重ねた。


「翔…」


外の風が一層大きな音を立てた。


思わず窓の方に顔を向けた。


暫く眺めてから和也に顔を向けると、唇になにか柔らかいものが当たった。


「え…」


和也の、唇。

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