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第29章 まほろばの家 byアロエリーナ・のさまじょ・millie

眠る和也を見ながらポツリと呟く…。

「和也…そいつは…俺は腕利きなんかじゃない…。
初めて愛した人を救うことさえ出来ない…無能な男なんだよ…」

声が震える…。

寝てるから聞こえない…。
だからこそ溢れる本心。

眠る和也の肌は出逢った頃よりもずっと白く透き通っている。
1度は寛解したはずの病気…。

これで和也は幸せに生きていけるはずだった。
それなのに…希望はあっさりと壊される。

自らの口が和也に伝えた再発。

辛い治療を和に強いた。
それで和を救えると、病気が治ると信じてたから。
その為に身に付けた知識と技術だから…。

なのに俺が和に与えたのは…苦痛と治らないという現実だけだった。

その現実から和也が選んだこと…。

「翔くん…俺、これ以上の治療はいらない。治らないなら…こんな場所じゃないところで死にたいよ…」

その言葉に俺がやっと出した答えはこれだった。

「和也…なら俺と…静かな所で暮らさないか?山でも海でも…」

「なに言ってるの?翔くん、正気?」

驚く和也に俺は至極真面目に答えた。

「あぁ、本気だよ…。俺も疲れたんだ…」

静かに微笑む和也が「わかった」と言った。

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