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第34章 WINTER COMES AROUND by millie

和が俺に馬なりになって叫ぶ。

「兄貴ならいいのかよ?!

 お前だってわかってんだろ?
 兄貴は死んだんだよ!

 もぅ、いないんだよ…。

 雅紀がどれだけ呼んだって泣いたって
 帰ってこないんだよ!

 戻ってこいよ、雅紀!
 俺がいるから、ずっと隣にいるから!」

熱くなった身体が一気に冷める。

「和、ごめん…。

 俺は和に大事にして貰っていい
 人間じゃない!
 お前の唯一の家族を奪ったんだよ。

 俺があの時よそ見してなけりゃ、
 あの日誘わなかったら…」

心があの日に戻る。
大好きなアーティストのコンサート終わり。

二人してさっき感じた興奮を共有してた。

繋いだ手の温もり…。

直前に二人でカフェで飲んだ
ミルクティーの甘さ…。

彼の声…。

全てが甦る。

「違うだろ?あれは事故だ!
 暴走した車の巻き添えになったんだ!
 雅紀のせいじゃない!」

あの瞬間、恐怖で硬直した体を突き飛ばして
守ってくれたのは俺の恋人。

立ち上がって振り向いた先には
紅に染まる彼がいた。

「まさ…ぶじ?…よかった…ごめ…ね?
 し…わせ…に…なっ…」

最期まで俺のことを心配して、
俺を安心させるように笑った人…。

冬の気温が彼の温もりを奪っていく…。
俺の心もどんどん冷たくなってった。

あの時から俺はどこか壊れてるんだ。

和の気持ちをわかってながら利用してる。

和の表情や仕草に感じる彼。

それを感じたくて
和に身を任せる最低な俺…。

ねぇ、なんで連れてってくれなかったの?
一人の世界はいつも冬みたいに寂しいよ…。

「雅紀!お願い、俺を見て。
 兄貴じゃなくて俺を見てよ。

 好きだから、愛してるから…。
 兄貴の分も愛するから…」

「あの人の分も?」

見上げた和の頬を涙が滑る。
そのまま俺の頬に落ちる。

「あったかい…」

落ちた涙の温かさが凍りついた心に
沁みてくる…。

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