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第38章 Spice by つぎこ







「…なにアレ。俺への当て付け?」

視線は手元のゲーム機のまま、聞こえよがしに独りごちる。

ねぇ…。聞こえてるよね?

そっか。何も言えないよね。だって、未練ありありなんだもんね。


「…ま、別にいいけど。」

俺はそれっきり、だんまりを決めこむ。


アイツは息をひそめ、胸をぎゅっと押さえて、静かに罰を待つ。







「…どこの誰だか分かんないけど、これは少し違うんじゃないかな。」

ほんの数分前、帰り際の翔サンと、アイツとの会話。

チラリと視線だけ上げて様子を窺うと、翔サンの視線は、アイツの手首に残る鬱血痕に注がれていた。


「…ちょっとぶつけただけだよ。」

「…いつもそう言ってんじゃん。」

翔サンの指が、アイツの手首の痕をそっと撫でた。


はいはい。その誰かさん、ここにいますケド?

てか、触ってんじゃねーよ。

ココロの中で悪態ついて、俺はなに食わぬ顔してゲームに興じる。



「…俺が心配なの、分かるでしょ?」

「…うん。でもホントなんでもないから。」

はぐらかすように笑ったアイツを、翔サンは心配そうに見つめていた。


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