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第44章 -Laundream- by しーま

地下へと吸い込まれる人の群れに、足並みを揃える。


ひたすら同じ方向へ行儀よく進んでいく様が、まるでベルトコンベアーに乗って出荷されていくみたいで。


今日もまた、同じ一日が始まる。


大学を出て、そこそこの企業に就職して、なんとなくこの歳まで勤めてきた。


同期の連中は、系列会社の役職付きになっていく中、いつまで経っても俺の立ち位置は変わらない。


この間も上司に
『君は今ひとつ足りないんだよ』
と言われた。


今までも、
こんな曖昧な言葉で片付けられてきた。
自分でも、よく分かってる。


ふと、誰かが後ろから俺の肩にドンッとぶつかって、そのまま走り去っていった。
急な衝撃で、持っていた傘が手から離れ、人波に飲まれる。


うわ、最悪っ…!


慌てて流れに逆らいながら戻り、
ようやく辿り着いた傘に手を伸ばすと、目の前からそれが消えた。


驚いて顔を上げると、男性が傘を差し伸べていた。


ふにゃっと、という表現がしっくりくるような、柔らかい笑顔の、俺と歳も変わらないくらいの男性。


「はい」

「…あ、すみません」


傘を受け取り会釈をすると、男性も会釈をして人波に消えていった。

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