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第44章 -Laundream- by しーま

もうすぐ、一年で一番嫌いな月がやってくる。


俺の誕生日は12月24日。
世間では、いわゆるクリスマスイブ。
その影に隠れて、今までろくに誕生日を祝ってもらったことがない。


その前に、誕生日もクリスマスも一緒に過ごす彼女なんていないけど。


…まぁ、こんな金曜日の週末にコインランドリーに来てるヤツに、彼女なんてできるわけないか。


心の中でぼやきつつ、乾燥された服をカゴに投げていると、ガラガラと戸が開いて誰かが入ってきた。


隣の乾燥機に服を無造作に入れ終えた様子のその人は、そのままジッとしていて。


チラッと見遣ると、その人もこちらを見た。


…あ。


今朝、駅で傘を拾ってくれたその人だった。
俺には気付いてない様で、申し訳なさそうに口を開く。


「あの…小銭貸してくれません?」

「え?」

「財布忘れちゃって、」


ふにゃっと笑って、俺の顔を窺う。


その笑顔に押され百円玉を3枚渡すと「今度返します」と言って、乾燥機が回り出したのを確認して出て行った。



300円は返ってこないなと確信したけど、別に損した気分じゃなかった。


なんとなく、あの笑顔に心が救われたような気がしたから。

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