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第73章 とわごい by のさまじょ











「離さない…ずっと…お前は私のものだ…」









あの日から百年の歳月が流れた。

潤はもうこの世には居ない。

俺は桜の樹の上で、待っていた。



ふと見上げると、今夜はおぼろ月が浮かんでいた。

また桜の花びらが、可憐に風に乗って渡っていく。



「あの…」

樹の下から声がした。

宙を舞っていた桜花が、一斉に地面に吸い込まれていく。

その風の流れを目で追って下を見ると、一人の少年が立っていた。

小さな、小さな少年。

「いつも…ここにいるの?」

目が大きくて、可愛らしい顔をしている。






ああ…潤…





「そうだよ…ここに、来るか?」

「うん…」

少年を抱え上げてふわりと樹の上に戻った。

「こんな夜中にどうしたんだ?」

「おとうさんもおかあさんもいないの…」

「そうか…じゃあ、一緒にくるか?」

「…いいの?」

「ああ…今度こそ…」

「え…?」






俺は少年を抱え上げて夜空に浮かび上がった。





「名前はなんという?」






「ジュン…」










おかえり…潤…










胸の中の小さな手が、俺の着物の襟をぎゅっと掴んだ。



おわり

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