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第79章 春宵 by つぎこ







「…寒…っ。」

ひんやりとした空気が肌を掠める。


季節はすっかり春だというのに、まだまだ肌寒い日は続いてて…。

ごそごそと布団を引っ張りあげると、無意識に手元にあった温もりに手を伸ばす。





「 んー…。」


あれ?

半分まだ夢の中の、不可思議な現象。

それを確かめたくて、もう一度、その温もりに触れてみた。



「 んーっ…。」


んー…?

今度は間違いなく聞こえてしまった。



布団の中から発せられた、くぐもった声。

間違いなく、そこには誰かがいて…。


せっかくの休日の朝、微睡む脳が一気に覚醒した。


恐る恐る布団を捲ってみると、その温もりは、眩しそうに眉根を寄せる。そして煩わしそうな顔をして、クルリと背中を向けた。



…。

露になった、華奢な背中のライン。

そこで初めて、自分が何も身に付けてないコトに気付いた。


春の朝、どうやら俺たちは、肌寄せ合うようにひとつの布団に包まっていた、らしい…。


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