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第85章 君にいちばん近い椅子 by チャコ
初めてここに来たとき
人生終わった…って顔をしてた
海の見えるあの丘に座って
ずっと一人で泣いていた
覆ることのない辞令の紙を握りしめて…
そんなにここが嫌?
左遷されたことが悔しい?
でもさ
求めてるものは
本当にあの無機質な街にあるの…?
「櫻井さん…」
遠くから声をかけると
ビクンと躰を揺らして
僕に見えないように慌てて涙を拭く
見えてるけどね…
見えないふり、しといてあげる
「これ近所のおばあちゃんに貰ったんです。食べませんか?」
目の前に桜餅を差し出すと
それをジッと見つめている
「櫻井さん?」
「あ…あぁ…いえ…結構です」
「嫌いですか?トミさんの桜餅、美味しいですよ?」
頬張ってみせると
愛想笑いを浮かべた
誤魔化すのが下手なのか
そんなつもりがないのか…
不自然な笑顔が残った