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第96章 君棲む君と…。 by つぎこ





夕刻の診察室。
窓からは暖かなオレンジ色が射し込んでいる。

「…出来たっ。」

雅紀の手には小動物のフィギュア。
治療用の箱庭には、彼らしい独創的な世界が広がっていて…。

「…うん。自由でいいね。」

「…でしょ? 今日のは自信作♪ 」

彼は時間を見つけては、ここに入り浸る。本日ご機嫌なのは、担当していた患者さんが無事に退院を迎えたから。


♪♪♪♪…。
ポケットの中の携帯に、メールが着信した。

「…え? 」

『 櫻井先生、緊急入院のご連絡。』

用件はたったそれだけ。
詳細なんかどこにもなくて…。

「…おー先生、どうかしたの? 」

困惑する俺の手元を、雅紀が心配そうに覗き込んできた。

「…あー。ここんとこ忙しそうだったもんね。急患も立て続けだったし…。」

メールを覗き見た雅紀は、妙に納得してて…。

でもさ…。

「…ちょっと簡潔明瞭過ぎない? 」

送信先はそれっきり、音沙汰なし。



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