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第96章 君棲む君と…。 by つぎこ





翔くんが唇を噛みしめた。

どうせなら俺の指でも噛み千切ってくれればいいのにね。



都合のいい言葉で隠した秘密。

煽られるままに、自ら身体を開いて…。

なにかに取り憑かれたように宙を仰ぐ姿は、凄まじいほどに妖艶で…。

疾うに限界なはずなのに、
どこにそんな余力を残していたのか…。

いや、そんなの微塵もないか。

残るのはナケナシの…。

俺はそれさえすべて、奪おうとしてるんだ。
俺にできるのは、それくらい…。



「 あ…。」

夢と現の狭間、翔くんがなにかを嗅ぎとった。

火玉がひとつ、闇に散らばったんだ。

ふわりと綻ばせた口元。

ひとつ、またひとつ、砕け散る火玉。

彼は儚く身体を揺らしながら、空を見上げる。

火玉が砕け散るごとに、ひとつ、ふたつ、綻ばせ…

すべてを綻ばせ…。

儚く散らせていった。


壊れものはね、
粉々に砕いてしまえばいいんだ。

脆くなってしまったものは、
いっそ粉々に砕いてしまえばいい…。


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