センチメンタルメモリー
第2章 TOKYO
「とりあえず行くとこ無いなら俺ん家来るか?」
元からそうゆうつもりで上京してきた。
だからなんの躊躇も無かった。
「もちろん、お世話になります」
直哉の家に行くのは初めて。
話で聞いていたのはごく普通のマンションの一室。
「ほんっと迷惑かける女だな」
ふっと笑みを浮かべた横顔はどこか悲しそうな目を私に向けていた。
「そういや、翼の親は賛成してくれたのか?」
"翼"は私の本名。
伊藤翼。男勝りの名前。
この名前が大嫌いで援交の時は"椿"と名乗ってたっけ。
「知らない、上京するって言ってもなんもないよ」
直哉は私の家庭環境を全部知っている。
初めて会って話した時も分かってたような素振りだった。
リスカしても直哉は『死ぬな』としか言わなかった。
「そうか」