センチメンタルメモリー
第5章 わたしの仕事
一つのテーブルとソファーに座り、直哉と椿さんが話をしていた。
「こいつ、翼ってんだ。
いま俺の家に住んでる」
「まぁ、同棲してるのかしら?」
椿さんは冗談交じりに笑って見せた。
着物姿の椿さんはとても上品で綺麗な女だ。
「この店はね、未成年は雇ってないの。
でもね直哉さんには貸しがあるの。
だから特別。
私と翼ちゃんだけの秘密よ」
椿さんは私を見てそう言う。
透き通るような眼で何もかも見えてしまいそうだ。
「わ、分かりました」
ふと椿さんの眼が私の腕へと移動する。
それを見て椿さんはふっと笑い悲しそうな顔をした。
それは直哉と同じような目でもあった。
「あー、見てわかるけどちっと傷あっけど大丈夫か?」
その言葉で私は腕を隠した。