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aspirin snow

第4章 ***

雪に足をとられながら、
時折バランスを崩す私の手をしっかりと握ったまま、
私たちはゆっくりと丘を降りる。

途中、二人でバランスを崩し、
一緒に柔らかな雪の中に倒れこんだときでさえ、
私の手は彼の手に包まれたままだった。


 「大丈夫?」


彼が雪に埋もれる私の顔を覗き込む。


 「ぜんぜん大丈夫。
  昔はよく、こうやって雪と戯れて遊んだのに。
  大人になると、そんな楽しさも忘れてしまうなんて。
  なんだか、寂しい…」


そう言って勢いよく立ち上がった私は、繋がれたままの手に力を込め、
彼が立ち上がるのを手伝った。

そのとき。

一瞬。

ほんの一瞬だけ。

彼の顔がゆがんだ。


 「どこか、痛めた?」


彼の顔を見つめたけれど。


 「ん?なにが?」


彼が私より早く一歩を踏み出したから。

繋がれた手を引かれるように、私もまた歩き出した。

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