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aspirin snow

第7章 ******

日々は流れ。

冬は深まり。

世界は深い雪に包まれた。


空気の冷たさに雪は煌き。

空気中の塵が雪とともに取り除かれた空気は、驚くほどに澄んでいる。


雪が降り積もる音が聞こえるほどの静寂の中。

彼の部屋の前に立つ。

ノックもせずにそっと扉を開け、その部屋へと足を踏み入れた。


5日ぶりに見る彼は、ベッドに横たわり浅い呼吸を繰り返し眠っている。


空になったペットボトル、飲みかけの水、汚れたタオル。

ベッドサイドには彼が一人で苦しんでいた痕跡が残っていた。


そっと首筋に触れると、触れただけでわかる高い熱。

濡らしたタオルをそっと額に乗せると、
彼はゆっくりと目を開けた。


 「勝手に入ってきて、ごめんなさい。
  干渉しない約束だったのに。」


彼は私を見定めるようにじっと見つめる。


 「もう5日も部屋から出てきてくださらないから、
  ごめんなさい、
  様子を見に来てしまいました。
  熱があるみたい。
  風邪、かしらね。
  今、冷却剤とスポーツドリンクを持ってきますから。
  ゆっくり休んでください。
  何か用事があったら、遠慮なく携帯鳴らしてくださいね。」


彼は何も言うことはなく、
空のペットボトルやタオルを手に部屋を出る私の姿をただ見ていた。

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