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aspirin snow

第2章 *

 「大丈夫だろ。
  何からも邪魔されないところに、少し身を置きたいんだってさ。
  碧音さんがOKなら、早速彼に連絡するよ。」


そう言い張る彼、櫻井さんは。
このペンションの常連さんで。

常連さんと言っても、ほかの常連さんとはちょっと違っていて。

彼の場合はこの辺りが緑に囲まれる、所謂、繁忙期ではなく、
雪で閉ざされてしまう、もう誰も来なくなるような、
そんな季節に、毎年1ヶ月以上の長期で滞在するお客さんだ。


 「櫻井さんは、敢えて静かな誰も来ない季節を選んでここに来てくれるけれど。
  いくら仕事をするためと言っても、普通の人は、この時期に来ても退屈するだけじゃない?」


櫻井さんがここに来る目的は、誰にも邪魔されずに仕事をするためで。

物書きの彼は、いつもびっくるするくらいたくさんの資料とともに、このペンションにやってくる。


 「まぁ、そいつもさ。
  職種は違うけど、俺みたいにいつもと違う環境で仕事がしたいって言ってるから。
  退屈なくらいがいいんだよ。
  俗世から隔離された世界に身を置いたほうが、新しい何かがみつかることもあるしね。
  ってことで。
  俺同様、おそらく長期滞在になると思うから。
  碧音さん、よろしくね。」

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