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aspirin snow

第4章 ***

雪が深々と降り続き、静寂に包まれる昼下がり。

それまで毎日聞こえていた、彼の足音は聞こえなかった。

邪魔をしてはいけない。

心配じゃないわけではない。
でも、プライバシーを守るのも、私の仕事のひとつ。

ここに来たときに言われた「放っておいてほしい」という言葉を思い出す。



夕食時になれば、
明日の朝になれば、
明日の昼下がりになれば。

そう思い続けて3日が経ち。

トトントトンと。
階段を下りる彼の姿をいつもの昼下がりに見たとき。


 「二宮さん。」

 
私は思わず彼に駆け寄った。


 「外はすっかり雪化粧したんだね。」


何事もなかったように彼はそう告げる。

あまりの顔色の悪さに、じっと見つめる私に、


 「あんまり寝てないんだ。
  部屋の冷蔵庫の水、なくなっちゃったから、もらえる?」


安心させるように微笑む二宮さんは、
やさしい笑顔とは裏腹に、何も聞くなという雰囲気を漂わせている。


 「はい、もちろん。
  お部屋まで、お持ちしますね。
  お食事はどうしますか?
  何か食べやすいものでも、作りましょうか?」


 「ありがとう。
  でも今は、眠りたいんだ。」


再び部屋へと戻っていった。

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