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あなたの色に染められて

第24章 Persuade





『ゴメ~ン!』

『お疲れ。帰ってきても大変だねぇ』

『…ホント。嫌になっちゃう。』

少し遅れて待ち合わせの職員玄関に来た璃子は 大袈裟にため息を付いてクスリと笑う。

正面玄関に待機しているタクシーに乗り込み 予約した個室のあるイタリアンのお店に車を走らせてもらう。

璃子には幸乃さんが同席することを話していない。

店内に入り 案内してもらった個室のドアを開け 璃子を先に部屋に入れると

『…え?』

『…久しぶり。』

幸乃さんがスッと席を立ち頭を下げた。

『座って。…璃子。』

椅子を引き 戸惑う璃子を座らせる。

『ごめんね。あんたに言ったら絶対に来なかったでしょ。』

騙してしまったようで罪悪感もあるけど 今日だけは本当にごめんね。


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はじめこそ 口数の少なかった璃子だったけど 美味しい料理に手を伸ばし ピンク色したスパークリングワインで喉を潤せば 自然と会話にも花も咲く

『長谷川さんてロマンチストなんだ~。』

『そうよ。だから大変。…記念日とか私より覚えてるんだから。』

『いいなぁ。…直也なんか全然だよ…うらやましぃ。』

『直也さんも素敵だよ。美紀はわかってないなぁ』

璃子はアメリカに行った半年で随分と雰囲気が大人っぽくなっていた。

もともと色素の薄い肌や髪。そのブラウンがかった髪に緩くウェーブをかけ 洋服もシンプルなんだけど 生地はとても良さそうで白い肌をより際立たせていた。

『…川野先生とはどう?』

それは少なからず川野先生の影響だと思ったから。

『終わったの。もう…』

『…え?』

そう言った璃子は優しく微笑んだ。

『…今日も二人一緒だったよね?っていうか …アシスタントやってるよね?』

『うん。仕事は仕事だから。』

フォークをお皿に置き 一呼吸おいて璃子は下を向いたまま話はじめた。

『…ごめんなさい。…話してなくて。』

璃子は私たちに先生とアメリカに行ってからの話をしてくれた。

なによりも璃子の気持ちを優先してくれていた先生と

その気持ちに応えることはできなかったけど大切にしてもらった璃子のこと。

離れてしまった二人だけど お互いがお互いを必要とし それはそれでいい付き合い方をしてたんじゃないかって

璃子の頬を伝う涙がそう語っていた。

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