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僕が僕を殺した理由

第2章 。

 
「そっかぁ」


会話はそこでまた途絶え、その後には気まずさしか残らない。それを取り繕うかのように、僕はタケから発せられる言葉を期待し、催促した。


「何か話があったんじゃないのか?」


「まあな。けど、後でいいや、そんな急ぐ話でもねぇし」


タケはそう答え、語尾を濁す。茶色い液体の入るグラスを掴み、僕は落胆する自分を誤魔化すように口へと運んだ。

グラスの表面に浮かんだ水滴が掌を濡らし、カウンターに一粒の雫を落とした。僕にはそれが不愉快に感じられ、先ほど差し出されたおしぼりで、何度も繰り返し拭き取った。

タケは煙草に火を点けるわけでもなく、ジッポライターの開閉を繰り返している。カシャン、カシャンと金属の擦れ合う音が、この耳に耳障りに聞こえていた。そして、タケの進まない話に、僕だけが苛立っていた。

 
「場所、変えようか?おまえ、こういう煩いとこ、苦手だろ?」


タケはそう言ったが、この環境に居心地の悪さを感じているのは僕ではなくタケの方だろう。タケの落ち着きのない仕草がそれを僕に伝えていた。


「ここでいいよ」


僕の吐き捨てたその言葉は、タケの耳に冷たく聞こえていたのかも知れない。その顔にまた、苦笑いが浮かぶ。


「そうか?お前がそう言うならいいけど……。あっ、そう言えば、こないだ山田 寿にあったぞ。あいつ今、社長やってるんだって。すげぇよなぁ」


「へぇ。で、何の?」


「バイク屋だってさ。あいつ、勉強できなかったなわりには、昔っからバイクだけには詳しかったし、もしかすると天職かもな」


そう言って笑うタケの声に、僕は態とらしさを感じた。今の僕にはタケの口から聞かされる同級生の近況など、どうでもよかった。それはタケにも言える事らしく、互いのたどたどしいやり取りに違和感が漂う。

タケが今更、何故、僕を呼び出したのか見当のつく僕は、早くその話を聞き終えここから逃げ出したかった。そのせいかグラスを口に運ぶペースは早く、変化のないタケのそれに比べ僕のグラスだけ空に近かった。
 










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