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秘密のおとぎ夜話

第15章 【赤ずきん】壁の向こう

「⁉」

驚きの次に赤ずきんを支配するのは、抱きしめられた温かさ。
1週間ぶりの誰かの体温と、懐かしいお兄ちゃんのにおい。
それから、これが、お兄ちゃんとの初めてのキスだってこと――。

ちゅ、ちゅ、とついばむような動きを繰り返し、
赤ずきんの緊張が緩むと徐々に口づけが深くなる。

オオカミのそれより薄く滑らかな舌が、
赤ずきんの口の中のすべてを愛撫していく。

「んぷ、はぁ…っ」

赤ずきんの涙は止まり、代わりに甘い吐息がこぼれた。

何度身体を重ねても、
いくらせがんでもしてくれなかった唇へのキス。
何も考えられなくなってすっかり体温が上がるまで。
優しいながらも、有無を言わさぬ強引さでそれは続いた。

「…これは、他の誰にもしてない」
ほほを上気させ、瞳をトロンと溶けさせた赤ずきんに
息がかかる距離のまま、従兄がゆっくりと言葉をつむいだ。

「俺が他の女の治療してるとこ、見たんだな。
 それでやきもち焼いたのか?」

「うん…」
あんなにこんがらがって苦しかった気持ちは
従兄が言葉にすると、いとも単純なことのように聞こえた。

従兄がくく、と苦笑する。
「お前ってひでえ。
自分はオオカミともイチャコラすんのに俺はダメって。」

ほんとだな、わたしってすごいワガママだ…
従兄の腕の中で甘やかされながら、赤ずきんは自覚する。
目の前の従兄と、森の中で自分を心配しているだろうオオカミ。
2人を誰にも、渡したくない。
わたしは、2人に、ずっと…

従兄は赤ずきんを抱きしめたまま、話を続けた。

「まーその…さっきは仕事だって言ったけど、
 俺はお前の治療、後ろの穴も開発したりして楽しんでたし…
 同時に嫉妬で苦しんでた。
 今の赤ずきんなら…この意味、わかる?」

赤ずきんはコクコクとうなずきながら、また大粒の涙をこぼす。

そして濡れた瞳のまま、従兄への「お願いごと」を口にした。



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