
コケティッシュ・ドール
第1章 気になる隣人
まだ動悸はおさまっていない。
むしろ酷くなっているような気がする。
さっきからやけに苦しい。
私はその場にしゃがみこんだ。
「だ、大丈夫ですか?ちょっと…」
大きくて硬い掌が背中に触れた。
私はビクンと背中を波立たせる。
「…触ら、ないで…」
私は風にかき消されそうな声で言った。
汗が噴き出してくるようだった。
深く呼吸ができない。
みるみる視界が霞んでいく。
ビニール袋、確かバッグに入ってたはず…
その時、酷く重い身体を優しい腕が包み込んだ。
口元にビニール袋があてがわれる。
「大丈夫だから」
白川先輩の声だった。
