
秘密中毒
第12章 告白
「今日の食事、なんか豪華だな。君もきれいだし。何かあった?」
「…えっ?」
気づかないと思ったのに。でも、話すなら今。
「あのさ。話があるんだ」
「…ええっ??」
大きく息を吸ってたあたしより一拍だけ先に、あの人が切り出した。何かあったかって聞いといて。
…今日はなんだかあの人の様子が違う。
「君に内緒にしてたことがあってね。」
「ま、待って!待って!あたしもなの。話が…」
何だか分からないけど先に話させちゃダメな気がした。
あの人の目はいつもより少しキラキラとして、あたしをちゃんと見ていたから。
「落ち着いて。先に言わせてくれよ。大事な話なんだ。」
あたしだって大事な話だけど、言いにくさが手伝って押し切られてしまった。
…………
…………
良い話、だった。
あの人はひそかに研究機関の面接を受けていて、採用になったというのだ。
勤務地はアメリカ。
「ついてきて欲しい」
あの人はそう言って、締めくくった。
どうして。
あたしのことは、いらないんじゃないの?
あたしをちっとも見てなかったくせに。
どうしてついてきて欲しいなんて言えるの?
「…だめ、行けない。」
「どうして?君なら英語だってすぐに…」
「ちがうの!」
あたしは大きな声を出していた。
「あたし、あなたを裏切ってるの!
浮気したの!!
あなたとはもう暮らせない。
アメリカに行けないんじゃなくて、結婚を終わりにしたいの…!」
下を向いて一気にまくし立ててから、あの人に視線を合わせる。
あの人は少し驚いているけれど、静かにあたしを見てる。
「怒らない、の…?」
いつもそう。
あたしには何も見せてくれない。
あなたは一体どう思ってるの?
「どうして怒らないの?
それにあたし、最近はあなたにキスしてなかった。
あたし、明らかにおかしかったでしょ?
気づかなかったの?
ねえ、答えてよ!
こた…」
急にあの人が立ち上がって、あたしののどが驚きで引きつる。
テーブルをはさんで向かいのソファにいたあの人は、大またでこちら側にやってきて。
あっという間にあたしと距離をつめた。
「…怒ってるよ」
どんなことになっても受け止めるつもりでいた。
それでも、あたしは見たことのないあの人におびえた。
