
秘密中毒
第12章 告白
こわい。
あの人に対して抱いたことのなかった感情。
あたしはとまどいの極地にいた。
スローモーションみたいに、ブラウスのボタンがはじけ飛ぶ。
あの人があたしの服を、乱暴に扱うなんて。
ううん。服だけじゃない。あたしを。
『男は性的に興奮すると乱暴になるって知らないのか?』
こんなときに山田くんの言葉を思い出す。
でもこれは、性的興奮じゃなくて、純粋にあたしへの怒りなのかな。
それならちゃんと、受け止めなきゃいけない。
そう思うのに、あの人の手がブラジャーにかかったとき、あたしは叫んでた。
「やめて!」
やみくもに手を振り回して、あの人から離れようとしたのに。
あっという間にソファの上に組み敷かれてしまった。
「いや! イヤなの!」
スカートの下に入り込む手をつかんで引っ張ってもどうにもならない。
どうして男の人は力が強いんだろう。
なんで女はイヤなのにこういうことをされてしまうんだろう。
『身体は嫌って言ってない』
また彼の声がよみがえる。
…山田くんにも口ではイヤって言ったけど、ぜんぜん違う。
夫であるこの人に乱暴にされることが、本当に怖くて悲しい。
なんでこの人は、あたしを2年もほっといたのに。
あたしがどんなに望んでもダメだったことを、今になって。
前戯もなく、ショーツを下げることもせず横にずらして、あの人の固いものがあてがわれる。
「どうして・・・やめてよ!
いやあ・・っっ」
たすけて。
山田くん。
痛い。
痛い。
痛い。
「…?」
痛くない。
あたしの中の固かったものが、しぼんでいくのが分かった。
乱暴だったあの人の動きが止まって。
あの人が言った。
「…ごめん」
……………
……………
…………………………
「ひどいよ…こんなの」
泣きながらも少しほっとして、身を起こしたあたしは、
まだきちんと分かってはいなかった。
あの人の「ごめん」の意味を。
