
秘密中毒
第5章 再会
「治るまで夫婦生活は我慢な」
あたしをうっとりさせてたきれいな横顔が、また想定外の言葉を吐く。
「えっ?…あ、はい。」
「早くて2週間で治るから。あと旦那さんにも塗り薬出しとくから、一緒に治療すること」
「………」
旦那さんには必要ないです、とは言えなかった。
卓也さんの顔が浮かんだけれど、薬を飲んだのは会った日の翌日だから大丈夫。
「何?2週間もできないのは不満か?」
あたしが考えこんだのを見てすかさず山田くんが言った。
「そっ!そんなことない!…………です。」
慌てて否定した後で、楽しそうに光る目と笑いをこらえて引き締まる唇が目に入って。
あたしはまた、からかわれたんだと知った。
山田くんは肩を震わせて笑い始め
「ふ、くく…お前、変わらねぇ…ははは」
「も~!そっちこそ!………です!」
「ぶはっ。やめろ、その中途半端な敬語」
「だって…まだ山田くんって信じられないし。一応お医者さまだし」
「まだ信じてないのか?頭わりぃ――」
さらに笑いながら山田くんが言った時、外から戻ってきた杉本さんが口を開いた。
「先生、いくら仲良しだからって患者さんにそれはないです!」
な、仲良し……って。
「お薬用意できました。」
「ああ、悪い悪い。あやとりが昔とおんなじすぎてツボッたわ」
やっと笑い終えて彼は言った。
「錠剤と塗り薬だ。あと風邪の飲み薬。薬の使い方、杉本から聞いとくように」
往診でもすぐに薬が出てくるなんて、すごいな。
