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秘密中毒

第5章 再会



錠剤は一度だけ膣の奥に入れる。塗り薬は毎日外側に塗る。

薬の説明の後で杉本さんに聞いてみた。

「あのお医者さん、あんなに口が悪くて大丈夫なんですか?」

杉本さんはあのまぶしい笑顔で言った。

「とんでもない!すごく優しいって患者さん達に評判がいいんですよぉ♪」

「うそだ…………」

そういえば最初の営業スマイルと優しい声、あれで通してるんだな。

「か…仮面医者だよ…」

杉本さんはあたしの呟きを気に入ったのか、ケタケタ笑った。

「私、今日初めてあんな先生見ましたよ!いつもが仮面だったなんてね~」

聞こえたらしい山田くんは「俺は真面目に勤務してるだけだぞ、人聞き悪いな。」

言いながら玄関に向かう。

「じゃあ1週間後の土曜日に伺いますね!」
杉本さんの笑顔がはじける。

また、つられて笑顔になって言った。

「ありがとうございました、またよろしくね」



すると最後に玄関で振り向いた山田くんが。

あたしに顔を近づけて。

「錠剤は奥の方に入れるんだぞ。なんなら入れてやろうか?」

耳たぶから背骨まで響く低音でささやいた。

あたしは顔に熱が一気に上がるのを感じる。「け、結構です!!!!」

ドアを勢いよく閉めて、玄関に座り込む。

よろしくって言っちゃったけど、あいつも来週来るんだった!


もう…………

どうしよう。


こんなの予想外すぎて、心臓が壊れちゃうよ―――――――



この時はただ、思いがけない再会にときめいてた。

あたしの胸が痛む理由を懐かしさだと理解して。

…………

………………………

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